過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第65章 男か女か
「すまない。君の足の神経に異常が無いか確かめたかったんだ」
「それならもっと他にやり方が・・・」
そこまで言ってナナシは言葉を切り、眉根を寄せた。
「・・・・もしかして、人の足を痣が出来るほど
強く握ったのはお主か?」
「ご名答。君を運んでいる時力を入れていたんだが、
気付かなかっただろう?それで私は不安になってしまった。
君の感覚に異常が生じてしまったのではないかとね」
「・・・・・・・・・・」
ナナシは何も言わず包帯を巻き始めようとしたが、
エルヴィンによってやんわり取り上げられ、
彼が丁寧に包帯を巻き直してくれた。
「・・・白くて綺麗な足だね、ナナシ」
「・・・・そうか?」
「あぁ、とても綺麗だよ。こんな綺麗な足に
傷が残ってしまったらと思うと心が痛む」
「別にお主が気にする事ではあるまい」
「いや・・・君が怪我を負ってしまったのは私のせいでもある。
君を懇親会に連れて行き、一度犯人の捕獲に失敗し、
君が連れて行かれるところを見送ってしまった」
懺悔のような言葉を紡ぐエルヴィンに
ナナシは居た堪れない気持ちになる。
別にこれはエルヴィンのせいではなく、
ナナシの不注意で負った傷なのだ。
それなのに何故エルヴィンは辛そうな顔をするのだろう。