過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第48章 秘められていた想い
「口では・・・流石にでかすぎて無理だが、
手でなら・・・」
卑猥な手付きをしながら尋ねてくるナナシに、
ミケは心の中で「質が悪い・・・」と思った。
こんな鈍感で天然で無防備なナナシによく手を出していないな、と
エルヴィンに尊敬の念を抱く。
麻薬のようなフェロモンを振り撒くナナシに、
耐えられるはずが無い。
クラクラする意識に苛まれたミケはとうとう
「・・・出来れば口で・・・頼む」
と、禁断の言葉を口にした。
エルヴィンがナナシを異常に愛しているのは理解していたが、
ミケも少なからずナナシに複雑な想いを寄せていたのだ。
訓練兵団に入る前に出会ったナナシは、
ミケにとって『特別』な思い出だった。
初めて自分を理解し、許容してくれた存在。
エルヴィンと共にナナシに再会した時、
何故自分もあの時気づかなかったのかと後悔する程に・・・。
あの時すぐ気づいていれば、エルヴィンに遅れることは
無かったはずだ。
エルヴィンまでとはいかなくとも、
自分だって誰に憚れる事無くナナシを口説いていたはずなのだ。
そう思う反面、いっそずっと気づかなければ
良かったのかもしれないと思わなくもない。
気づかなければ、こんな苦しい複雑な思いをせずに済んだだろうし、
一人の『仲間』としてだけ見れたはずだ。
抱きたいとか、そんな想いを抱くことも無かったはずだ・・・。
しかし、時間は戻らないし「もしも」なども存在しない。
苦しい想いを抱きながら、ミケは自分のイチモツを慰めるナナシを
ただ静かに見つめた。