過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第45章 恋愛相談と恋愛観
「どうせ、結ばれぬと分かり切っているのだ・・・」
「それはどういう・・・」
意味・・・と問いかけてエルドは身体を硬直させた。
視線を上げると、そこにエルヴィン・スミスがいたからだ。
しかもナナシの肩を掴んで迫っている体勢に見えなくもない自分に気付き、
恐怖のあまり全身から血の気が引く。
ナナシからパッと身体を離して、エルドはエルヴィンに敬礼した。
「お疲れ様です、団長」
「あぁ、お疲れ様。どうやら私は邪魔してしまったようだね」
微笑を浮かべているはずのエルヴィンの目が笑っていないことに
気づいたエルドは、すぐにその言葉を否定する。
「いえ、そのような事は・・・」
「邪魔された。エルドともっと話していたかったのに」
が、ナナシがエルヴィンの神経を煽るような事を言ったので、
エルドは顔面蒼白になりながら必死に弁明の言葉を考えた。
何でそんな事言うんですか、ナナシさん!と訴えるように
視線をナナシに向けてエルドはハッとする。
ナナシはいつも人形のようにあまり感情を表に出さないが、
今はまるで子供のように拗ねた表情をエルヴィンに向けていた。
そこで漸くエルドは、ナナシにとってエルヴィンという人間は
無自覚ながらも特別な存在であるのだとわかったのだ。
恐らくエルヴィンにだけ見せる豊かな感情表現があるのだろう。
ナナシは難しく恋愛について考えていたが、
実はそんな難しく考える必要は無く、
ただ自然にエルヴィンの傍に居れば良いのではないのかと思えた。
そう思ったら、少しでもナナシを
エルヴィンの傍へ置いておかなければ・・・と、
エルドはナナシの両脇に手を差し入れ持ち上げる。