過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第1章 序章:失われた歴史
しかし、団長や仲間の死を平然と受け止める事は出来ず、
私の心には消えない傷として深く刻み込まれた。
もう二度と私の名を呼ぶものはいない。
数少ない仲間の生き残りも、
もう二度と私を名前で呼ぶことはなかった。
彼らは皆私を役職名でしか呼ばなくなってしまったのだ。
それが何を意味しているのかを考えたが、
私はそれに気づかない振りをした。
私を担ぎ上げ組織の復興を目論む輩とも、
かつての栄光に縋り病んでいく者達の相手をしている事も、
私にとっては危険だったからだ。
彼らは私の異常性を知っている。
捕まってしまえば、担ぎ上げられるか、
売られて解剖された挙句殺されるかのどちらかだろうという事はわかっていたから、私は背を向ける。
今の私の存在意義は、『ある物』を探し出して取り戻すことだった。