過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第29章 綺麗な物語は万人に受け入れられる
「とんだ詐欺師だな・・・・」
特別作戦班が立ち去った後、
隣室で全てのやり取りを聞いていたリヴァイが現れ、
開口一番そう言った。
「酷いな。多少、時系列がバラバラになってしまったが
嘘は吐いていないよ。それに彼らだって仄暗い真実よりも
綺麗に並べ立てた物語の方がお気に召したようだし・・・」
「てめぇの下らない茶番に部下を巻き込むな」
「下らないとは心外だな。ナナシを落とせれば契約期間を、
半年から命ある限りまで延ばせる。
それは調査兵団の有益に繋がるんだぞ?」
口元に笑みを浮かべながら残酷な事を言うエルヴィンの本音が
どこにあるかリヴァイにはわからない。
本当にナナシに惚れているのかと時々疑問に思うことがあるが、
リヴァイにとってそれはどうでも良い。
巻き込まれなければ、
エルヴィンの私生活に興味は無いのだ。
「おまえにも協力してもらうぞ」
エルヴィンは、ゾクリとする程綺麗に笑った。