過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第22章 勝負!
「何を言っておる。勝負はまだついていない。
私はまだ気絶もしていないし、降参もしておらんぞ?」
「では、降参してくれないか?手荒な真似はしたくない」
「はっ!断る」
「・・・・仕方無い。なるべく痛くないように気絶させてあげよう」
意外と往生際が悪いな、とエルヴィンは溜息を吐いた。
エルヴィンは自分の身体能力がどれくらいか理解している。
真っ向勝負を挑めば返り討ちに遭うのはわかっていた。
だから、薬が効くまで話を二転三転させながら時間稼ぎをして、
ナナシが戦闘不能になるのをひたすら待った。
彼の戦闘力なら一撃で自分を沈められただろうが、
彼は絶対そうしないと踏んでいた。
ナナシは敵には一切容赦しないかもしれないが、
自分には様子見をしてくるだろうという確信があったのだ。
幼い頃に会った子供の成長がどれくらいかを見極めるはずだ、と。
予想通り、彼は一撃ではなく軽い打撃を繰り返すだけで
エルヴィンの行動を観察しているようだった。
時間稼ぎに気づかれた時はマズイと思ったが、
良いタイミングで薬が効いてくれたので命拾いしたと思っている。