過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第22章 勝負!
「チャンスだと?」
「君の好きな人は強い人だったんだろう?
どうすれば、君に強い人と認めてもらえる?
君は強い人間にしか従わない・・・私はそう解釈している」
確かにそうだが、何故ここでそういう話になるのかわからない。
怪訝な表情をしていると、エルヴィンが
「こういうのはどうだろうか?」と提案してきた。
「君の土俵・・・つまり、得意な対人格闘で勝負して私が勝ったら、
君は調査兵団へ入る。勿論武器無しだ。
私が負けたら大人しくこの場を去るよ。
どうだい?この話に乗らないか?」
「・・・・・・・」
正気か?
確かに体格から言えばエルヴィンの方が上だが、
技術や経験・・・もっと言えば地力はナナシの方が圧倒的に上である。
リヴァイからナナシの身のこなしを聞いているなら、
こんな馬鹿な賭けを提案してくるはずもない。
何か罠があるのか・・・それとも、
純粋にガチンコ勝負をしたいのか、全然読めない。
チラリとリヴァイの様子を覗うと、
彼は勝手にお茶のお代わりをしていて
明後日の方を向いていた。
この件に関して、彼は一切関知しないという事だろうか。
罠があるかもしれないが、このまま居座られても迷惑だし、
退く気の無い相手にはガツンとやるしかないだろう。
「・・・わかった。その提案を受けよう」
「そうか、良かった。では、庭先で勝負しようか。
審判はリヴァイにしてもらおう」
そう言うとエルヴィンは装備していた立体機動装置を
手際よく外していった。
・・・本当に素手だけで勝負をするつもりだろうか?
ジャケットも脱ぐと、エルヴィンは爽やかとも言える笑顔で
ナナシを手招き庭へと下りていく。