過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
突き当りの壁に耳を当て、壁の向こうの様子を窺ってから
ナナシはエルヴィンへ振り返った。
「一つ、言っておきたい。この壁の向こうの物を使うのは構わん。
だが、何も聞くな。知ろうとするな」
「・・・・それはどういう意味だ?」
「知らぬ存ぜぬで通した方がお主らの為だという事だ」
「そりゃ、ここにあるブツがやべぇって事か?」
リヴァイからの問いに肯定すると、
ナナシは壁を叩き始めた。
リズムを刻むように叩いた後、ナナシが「狼が来たよ」と言葉を発すると、
それが合図だったかのように石の壁が音を立てて動く。
冒険ものの物語のような光景を前に、ハンジが声高に叫んだ。
「すっげー!どういう仕掛けなのかなっ!?
調査兵団にもこういう秘密基地が欲しいよ!
ねぇ!エルヴィン!」
「・・・・・・あぁ」
扉のように動いた石を調べながらハンジが奇声を上げる中、
ナナシは奥へと進み灯りをつける。
いくつかの蝋燭に火を灯すと、室内の様子が漸くわかった。
蜘蛛の巣や埃が積もったその部屋の正面と左側にはドアがあり、
更に奥の部屋があるらしい。
今いる部屋には甲冑のようなものが置かれていて、
ナナシは棚からその一つを引っ張り出すと
装備していた脚甲と取り替えた。
エルヴィンはリヴァイとミケに使えそうなものを探すように指示を出すと
(ハンジは動いた壁に夢中で役に立たない)、
自身も部屋の中を物色し始める。
よく見るとライフルや弾丸もあり、
まだ使えそうか念入りにチェックしていると
横からナナシの腕が伸びてきて、
弾丸をありったけ持ち帰り用の袋に詰めた。