第2章 サプライズバースデー
キスしたのも、二宮さんの単なる気まぐれじゃないって信じてる自分がいる。
……こんなの、もう2度とないかもしれない。
机の上の雑誌を見て思った。
……本当は、これからも二宮さんと何かしら関係を持っていたい。
あたしは、手元の携帯を見つめた。
やっぱり今日のことはなしにしてもらおう。
二宮さんには申し訳ないけど、あたしなんかが隣にいることの方が申し訳ないので、断ろう。
……ていうのはあくまで建前上。
今日のこのデート(?)を断れば、二宮さんはまたあたしに会いたいと言ってくれるのだろうか。
二宮さんとの関わりを断つために行くのなら、あたしは行きたくない。
そう思って、LINEの返事をしようとしたら今度は電話の着信音が鳴った。
「もしもし?」
『もしもし、ちゃん?なんかあったの?
既読がつかなかったから……』
「あ……すみません……。何でもありませんよ」
平静を装って言ったのに、二宮さんには見抜かれるのは何故だろう。
『そっか……。あ、てか、準備できた?』
「あ、あの…そのことなんですけど……中止にしてくれますか……?」
『どした?体調でも悪いの?』
「いや、あの……」
あたしは中止にしてほしい建前上の理由を、全部打ち明けた。
最初は、二宮さんも相づちを打ってくれてたけど、あたしの言いたいことが分かってくると、返事はしてくれるものの聞こえてくる声のトーンが次第に低くなってきたのが分かる。
「……だから、今日は……お願いします……?」
“あーなるほど。そっか、じゃあまた今度にしよう"
そんな答えを期待してたのに。
『……………………………………却下』
優しい二宮さんだから、いいよって言ってくれると信じてたのに!
なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
「どうしてですか!?」
『そんなの、断る理由にならない』
まじですか……。
「えっ……じゃあ!」
『却下』
あたし、まだ何も言ってない!
『とにかく、準備ができたなら下に降りてきて』
やばい……。これ、怒ってる?
「……分かりましたよ……」
『あっ!電話は、繋いだままね』
結局、あたしの意見は聞き入れられなかった。