第15章 -内緒-(黄瀬涼太)
「えっ⁈あ、ううん。なんでもない。
ね、黄瀬くん、
それじゃ足りないでしょ?
よかったら、おかず少し食べる?」
黄瀬くんに言われて焦ったが、
わたしはすぐに話をそらした。
「いいんスか⁈」
「わたしが作ったから
味の保証はないけど…。
それでもよかったらどうぞ♪」
食い気味に言う黄瀬くんが可愛くて、
わたしは思わず笑いながら答えた。
「………。」
「黄瀬くん…?」
黄瀬くんが
ジッとわたしを見つめていた。
わたし、何か変なこと言った…⁇
な…なんか、恥ずかしい…。
顔がどんどん赤くなっていくのが
自分でわかった。
「すみれっち、真っ赤〜♪
かわいーい♪」
「そ、そういうの、いいから!」
突然黄瀬くんが
とんでもないことを言い出した。
「えー?可愛いから可愛いって
言ってるだけッスよ〜♪」
わたしはたぶん真っ赤だ…。
黄瀬くんはお世辞のつもりでも、
わたしにはもったいなすぎる
ことばだった。
「やっぱりお弁当あげないっ!」
「えっ⁈褒めたのにーっ!」
黄瀬くんの落胆ぶりが可愛かった。
本当に子犬がシュンとしてるみたい。
「アハハハッ…黄瀬くんて、
おもしろい♪カッコいいのに…♪」
黄瀬くんとの会話が面白くて、
わたしは大声で笑ってしまった。
「なんスかそれ〜?すみれっち〜」
「ねぇ、そのすみれっちってなぁに?」
「なにって…すみれっちッス☆
オレ、尊敬する人には敬意を込めて
そう呼んでるんス☆」
黄瀬くんはニッコリして言ったけど、
どのへんが敬意なんだろう…?
「なんでわたしにも
敬意を込めてくれるの?」
「可愛いし、英語ペラペラだし、
勉強教えてくれるからっス☆」
か…可愛い⁈
「英語はアメリカにいれば誰でも…。
あ、英語で思い出した!
早く食べて勉強しよ!
お昼休み終わっちゃう!!」
可愛いと言われ、テンパってしまい、
黄瀬くんに早く食べるように促した。
黄瀬くんは大袈裟なくらい
わたしのお弁当を褒めてくれた。
わたしはその間ずっと
真っ赤だったと思う。
好きになっちゃいけないのに。
それからやっと勉強を開始したけど、
黄瀬くんに教えていて、
90点は言いすぎたかな…と、
ちょっと焦ってしまった。