第21章 この恋心不良品につき 番外編
星織さんと出会ってからの彼は、わたくしが初めてちゃんと彼と話した時の冷たさを宿さず、いつしか氷が解けていくかのように、知らない間に優しく笑うことを覚え始める。貴方は気付いていて?
今も少し、星織さんの名を出すだけで、嬉しそうな表情を浮かべている自らに。
彼女以上に、彼の近くで彼を見ていたはずなのに……悔しさよりも寂しさが増すのは、何故かしら?
「カミュはわたくしの構ってちゃん攻撃に、だんだん応えてくれるようになりましたわね」
「勘違いするなよ。お前が煩いから仕方なくだ」
「仕方なく……ね」
今日だけ、と小さく願いながら彼の胸元に顔を埋めてみる。ぴくりと彼は反応を見せるが、何も言葉にしないわたくしの心情でも察したのか、何も言わなかった。
叶わない願いなら、いつでもこの胸の中に。
貴方を"好き"だという気持ちを凍らせて、わたくしは貴方の野望のため、自らの野望のためだけに、今日も明日も明後日も、最後の瞬間まで……。
カミュ、貴方の隣で。
貴方の心を奪い取るまでは、恋に膝をつくわけにはいきませんわ。