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いい女

第1章 いい女 1


 1

「ヤベぇよ」

「えっ、何が?…」

 わたしがある喫茶店のカウンターでアイスコーヒーを飲みながら、ノートPCで明日の会議の資料をまとめていると、後ろの席に後から入ってきた男の子、いや、大学生風の彼がそう話しているのが聞こえてきた。

「いや、この店の駐車場に赤い
『アルファロメオスパイダーヴェローチェ』が停まってるんだよ」
 興奮気味に話してくる。

「え、あ、アルファロメオ?」
「そう、ヤベぇんだよ…」
「何がヤベぇんだよ」
 と、もう一人が笑いながら訊いていた。

「いや、とにかくカッケーんだよ」

「ま、確かに格好いいかもしれないけどさぁ、そこまでは…」

「いや、違うんだよ、そのスパイダーのギアのところにさぁ、ほら、髪をまとめる紅いゴムが絡んであってさぁ…」

「だから?…」

「いや、だから、そのスパイダーのオーナーは女の人みたいで…」

「そりゃ、髪をまとめる紅いゴムがあるなら女の人だわなぁ」

「だろう、間違いないよなぁ…」






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