第4章 【第3章】譲れない場所
奥村side
急な質問の意図がわからなかった。
「……なんであんたに言う必要あるんですか」
さっきまでとは違う鋭い目でこちらを見続ける御幸先輩。
……何か知ってるのか、それとも探っているのか
「俺からあんたにあの人の事言う資格はない。ただ……」
まっすぐ御幸先輩を見る
「あんたに、あの人の傷は分からない」
譲れない。
さんから教わったこの場所も――
「……あの人を守るのは俺だけで十分だ」
例え相手がさんの大切な人であろうとも。
御幸side
……この顔のどこが純粋なんだよ。
敵意剥き出しじゃねぇか。
けどまぁ、
キャッチャーとしても、一個人としても
「……そりゃ、残念だったな」
生意気な後輩。
「は、守られるだけなんて許してくれねぇよ」
それに――
「それに俺も譲る気ねぇよ。
あいつのそばも、正捕手の座も」
夢主side
明日の市大三高戦に向けて、
ミーティングで使う資料をまとめる。
「……先輩、ちょっといいですか?」
1年生のマネージャーの子達が
私の偵察ノートを持って話しかけてきた。
「どうしたの?」
「私たち、球種の見分け方を知りたくて……」
真剣な目で聞かれた。
でも――
「私もちゃんとは、わかんないよ」
「え!?」
確かに私のノートだけをみたら、見分け方あるのかって思うかもしれない。
「パッと見似たような変化の球なんてザラにあるし、ピッチャーによって持ち球も違うし」
「なら、どうやって見分けてるんですか?」
「んー、勘」
私がそう答えると、
小田ちゃんと黒木ちゃんは目を丸くする。
「もちろん回転とか握りとか、ちゃんと見るポイントはあるよ?でも最後は、何回も見て覚えるしかないかな」
「例えば……」
私は2人が持ってきたノートを広げながら、
自分なりの見分け方の説明をする。
気がつくと日が傾きかけていた。
「あれ、もうこんな時間……ごめん、話しすぎちゃったかな」
「いえ!とても分かりやすかったです!」
「そうそう!それに先輩がとても楽しそうに話していたので!」
「……そう?」
思わず聞き返すと、二人は揃って頷いた。
なんだか少しだけ、くすぐったかった。