第10章 恋する乙女のための小夜曲
「ね・・・高山くん・・・手、繋いでいい?」
下から見上げるように優子が言う。青く暮れなずむ黄昏時、彼女の肌色は不思議な色合いを見せる。ボクは魔法にかかったみたいに、手を差し出し、彼女はそれを取った。
「私、ずーっと、見てたんだよ」
また、優子が言う。少し伏し目がちに、ゆっくり歩きながら。
「見てたって?」
さっきはなんとなく流れてしまった話題だ。
「同じクラスになってから、ずっと。すごいな、高山くんはって」
すごい?ボクが?
「誰とでも、すぐに仲良くなっちゃう」
それにね、と言う。ギュッと繋いだ手を握ってくる。
「高山くんは覚えていないと思うけど、私を2回も助けてくれた」
はて?
何かボクは優子を助けたことがあっただろうか?全く覚えがない。
会場についた。ボクらは花火を見るのにちょうどいいところを探す。普段は港として使っているスペース、花火を見に来た人たちは思い思いの所に腰を掛ける。
ボクらは優子が持ってきたレジャーシートを敷いて座った。花火が始まるまで、あと20分ほどだ。
隣通しで体育座りをすると彼女が『へへへ』と笑う。
「よかった、今日、デートできて。それでね、さっきの続きだけど・・・」
さっきというと、2回助けてもらって・・・というのの続きだろうか?
「だからね・・・私ね・・・、高山くんが・・・」
ずっと好きだったんだ、と優子は言った。
そして、ゆっくりと顔を近づけてくる。彼女の吐息が肌に感じられるくらい近く、ゆっくりと目を閉じる。
花火大会が始まるまで、あと15分ほどだった。