第27章 組曲:月下の夢 ”叢雲”
陽太くんの余裕がない、短い吐息が聞こえる。それは官能の悦びにあえいでいるというよりは、焦りや不安で息が浅くなっている、という方が近いものだった。あの神社で見たような色気はなにもない。必死になってちゃんをイカせようとしている陽太くんの姿が目に浮かぶようだった。
「んっ!んん・・・ふ・・・うううう!!」
ちゃんの余裕のないくぐもった叫びが聞こえる。その声は余韻を残して、消えていった。
しばらくすると、すすり泣きが聞こえた。ちゃんの声だとすぐに分かる。
「私・・・もう、ダメかも」
涙声で、訴える。あんなにいつもりんとしたちゃんが、今にも消え入りそうな声で呟いている。陽太くんは何も答えていないみたいだけど、壁越しにだってわかる。ものすごい、深い愛情で彼女を抱きしめている。
「お願い・・・。もう少し、もう少し、こうしていて・・・。」
色々な感情が湧いてきて、私はいたたまれなくなって、その場を離れた。
そうか・・・陽太くんにとって、これは性的な活動、というよりは、ちゃんを助けようとして必死に行っている『救援活動』なんだ。そして、ちゃんにとって、発情は忌むべき病気の症状であり、なにも喜ばしいことなんてないんだ。
この二人は、一見、性的な接触をしているように見えて、その実、苦しみから逃れようともがいているだけだったんだ。
それなのに、羨ましいなんて思っていた自分が恥ずかしい。
そして、それ以上に、ほとんど言葉をかわさずに抱きしめ合う二人に、心の底から、嫉妬した。