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彼女はボクに発情しない

第5章 保健室のブルース


☆☆☆
目が覚めた。白い天井、自分の周りを囲う白いカーテン。そして、ごわごわと寝心地の悪いシーツと上掛け。若干消毒薬の匂いもする。

保健室にいるようだ。

なんで?身体を起こそうとすると、ズキンと後頭部に痛みが走る。手を当てると包帯が巻かれていた。

いってー・・・。

「目が覚めた?」
どきりとする。一人だと思いこんでいたが、枕元に座っている人がいた。

「あ・・・・・・」

呼ばれた彼女は、大仰にため息をついた。何してるんだか・・・と、書いてあるような表情だ。それを見て、なんでこんな事になっているのか、ボクも思い出してきた。授業中居眠りして、先生に呼ばれてびっくりして、仰向けにひっくり返って・・・って。

・・・ああ、本当に、何してんだろう。ボクは・・・。

「大丈夫?」
なんでがここに居るんだろう?お前は保健委員ではないだろう?
戸惑うボクの様子に気がついたのか、「先生から保健室連れてけって言われて」と彼女は言った。要はお前は授業受けなくてもできるだろう、と、そういうことだったらしい。

「で?頭大丈夫?」
いや、言い方・・・。
「少し痛むけど、まあ」
あんた馬鹿なんじゃないの?という意味ではないはず、と好意的に解釈して応えた。
「そ」、と一言だけ言うと、はふいと視線を外す。その横顔がやや沈んでいるように見えた。どうしたんだ、と声をかけるより早く「じゃあ、行くから」と、彼女はそそくさと行ってしまった。

なんだいったい・・・。
まあ、いいけど。

時計を見ると、まだ1時間目は終わっていない。今戻ってもミブセンの数学だ。ちょっとこのまま休憩させていただこう。

が若干心配だが、昨日『発情』したばかりだし、今日は大丈夫である可能性が高い。まあ、万が一ってことがあれば、すぐ知らせてくるだろうから大丈夫だと思うが・・・。

そこまで考えて、ああ、と思い至った。
彼女としてはボクが気を失っているときに発情してしまうと困ると思ったのだ。

「だから、そばにいたのか」

ボクはひとりごちする。なんだ・・・もしかしたら、ちょっと心配してくれてたりして・・・とか思ったが、そうか、そんなわけないな。

まあ、しょうがないか。
ボクは眠りこけてしまわないよう注意しつつ、布団に潜り込み、休息をとることにした。
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