第8章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない Ⅱ**
「……帰りたく、ない」
「…………」
「私も……」
「先生と……いたいです」
……なに、これ。
なんで僕、こんなに嬉しくなってんの?
自分でもよく分からなくて。
なんか顔に出そうだから、先に口を開いた。
「素直じゃないんだから、は。帰りたくないなら、最初からそう言えばいいのに」
「そ、それは……先生もじゃないですか」
「僕はいいの。五条悟だから」
「ずるくないですか、その理由……」
が頬を膨らませて、むっとする。
その顔を見たら、なんだか急に笑えてきた。
「ふっ……」
「な、なんで笑うんですか」
「別に」
さっきまで泣きそうな顔してたくせに。
もう、いつものだ。
それだけで、なんかほっとした。
「ほら」
立ち上がって、に手を差し出す。
「アイス溶けちゃう。帰ろ」
は差し出した手と僕の顔を交互に見る。
それから、おずおずと手を伸ばしてきた。
小さな手が僕の手の中に収まる。
「……はい」
「ん」
僕たちは並んで歩き出した。
コンビニへ行く時も手は繋いでいたけど。
あの時は、僕が勝手にの手を取っただけ。
今は、僕が差し出した手をの方からちゃんと取ってくれた。
それだけのことなのに、全然違う。
マンションが見えてきて、もうすぐ部屋に着くっていうのに。
このまま、もう少し歩いててもいいかも。
なんて思ってしまったのは、が初めてだ。
隣を見ると、はまだほんのり頬を赤くしたまま俯いている。
けれど、繋いだ手はそのままだった。
僕も離したくなくて。
がどこかに行かないように、握る手にほんの少し力を込めた。
そうして歩いているうちに、マンションの入り口がすぐ目の前まで近づいてくる。
すると、入り口の前に人が立っているのが見えた。
こんな時間に誰だろ。
近づくにつれて、その姿がはっきりして――。
「……恵?」
𓂃 クロユリは君を離さない 𓂃
── to be continued.