第125章 依々恋々(いいれんれん)
『愛情の強さなら・・・負けないと思うんだけどなあ』
そう考えると、やっぱり自信か・・・
そればっかりはどうしようもないかもしれない。
少し気分を変えようと、トボトボと化粧室に立つ。
おトイレを済ませて、鏡に映る自分を見た。
そこに映る私・・・。
顔だって普通。
スタイルだって、飛び抜けていいわけではない。
陰陽師として特別な家系に生まれついてるわけでもなければ、誰にも負けないような技術や能力があるわけでもない。
性格だって・・・みんなからは『堅い』だの、『真面目』だの言われるような感じ。要は面白みのない人間なのだ。
やっぱり・・・九条様にはとてもじゃないけど釣り合わないよ・・・。
ふと、鏡に映る自分の横に、黒咲紗倉が立った。もちろん、イメージだ。橋本に執着しており、身だしなみに回す時間がないのだろう。化粧っけのない顔に、髪はボサボサで前髪が目にかかっている。服も何年も前のものをそのまま着ているようだ。シンプルな薄青のワンピースだった。その黒髪の隙間から、やたらとギラギラとした目が覗いていた。
『好きな人を追いかけたいのなんて、当たり前じゃない』
その影は、そう言い切った。
『釣り合わない?そんなことあるわけないじゃない!私以上に彼を愛している人なんて、この地球上どこを探してもいないんだから!!』
にやりと笑う。その笑みは不敵で、そして、自信に満ちていた。
そうだ・・・そうかもしれない・・・
好きな人のこと、私だって知りたいもの。
九条様は、休日はどこにお出かけして、何を見て笑うんだろう?
今どこにいて、何をしてらっしゃるの?
そして・・・どんな人が好きなんだろう?
ドッキン、ドッキン、ドッキン・・・心臓の鼓動が高まる。
そこで、ハッと気づく。
いけない・・・私ったら、占術で九条様のことを探ろうだなんて考えかけてしまっていた。もちろん、私用で陰陽術を用いるのは、陰陽寮の規定違反であり、場合によっては『呪力不法行使』の罪に問われかねない。
ぶんぶんぶん・・・頭を数回振って、私はそのいけない考えを頭から追い出す。
相変わらず鏡の中の紗倉は、私に『知りたいならやっちゃえ』みたいな視線を送ってきている気がする。そりゃ・・・知りたいは知りたいけど、そんなことしたら九条様を傷つけてしまうじゃない・・・。
