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天狐あやかし秘譚

第124章 一途一心(いちずいっしん)


目の前の現象を認識した脳は、急激に脳内伝達物質を産出。
活性化したホルモン系と自律神経系が私の身体のあらゆるところに変化を起こし始める。
動悸の亢進、血圧と体温の上昇、筋骨格系の緊張。
唾液分泌は減少し、瞳孔は死ぬ寸前なのではないかと思うほど拡大し、手掌と背中、脇の下からの緊張性発汗を感じる。
更に発火した自律神経系が、顔面の毛細血管が一気に開いていく。

要は、私は顔が茹でダコのようになり、全身から汗を吹き出し、体は石像のごとくカチンコチンに固まってしまったのだった。

握手、握手、握手、握手・・・
あの手に触れたら、もう、その手、一生洗えないかもしれない。
家に帰って、触れたお手々にキスしちゃったり・・・その手で触ったら、私、まるで九条様に愛撫されているみたいに・・・あああっ・・・きゃああ♡

そんな風に考えているところで、すっと、九条様の手が引かれてしまった。

「ははは・・・ごめん、ごめん、僕、海外にもいたことあってさ、つい握手求めちゃったけど、日本でこれやったらセクハラだよね!うん、いいよいいよ」

ああああああああああ

ずーんと一気に私のテンションが下がる。セクハラで訴えるどころか、私の方からベタベタ触りたいくらいなのにぃ!!!

天国から地獄とはこのことだ。

「い、いえ・・・お気になさらず」

頭の中は爆発しそうなくらい燃え上がっているにも関わらず、相変わらず私の口をついて出たのは、こんなつまらない言葉だけなのであった。
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