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天狐あやかし秘譚

第124章 一途一心(いちずいっしん)


☆☆☆
【数日後のある日】

6月の中旬のことだった。
その日は祭部衆の衆会議であった。

出席者は祭部衆を率いている大鹿島を始めとした本庁付きの陰陽博士と陰陽師である。

衆会議では、まず、次の週に祭部が取り仕切る手筈になっている祭祀の確認、それから、呪具の在庫及び納品状況の共有を行うのが常だった。その後、特に依頼事項があれば、その内容が共有され、担当が決定される。

会議を取り仕切るのは、陰陽寮の通常の慣習に従えば大鹿島についで位階の高い『属の二位』の宝生前か、もしくは『属の三位』である九条なのであるが、祭部では大鹿島の最側近である敷島明日香が担当することが通例になっている。これは、ダブルワークをしている宝生前や事案解決に引っ張りだこの九条があまり衆会議の参加率が高くないこと、そして、こちらのほうが大きい理由なのだが、この二人が取り立てて地位や名声にこだわらないことが原因だった。

本日は珍しく宝生前も九条も出席をしているのだが、そんなわけで今日もまた、明日香が司会を務めていた。

「・・・以上が来週の予定です。なにか不明な点はありますか?」
15人ほどの参加者一同が、特にないということをジェスチャーで示した。

「明日香・・・先程来た依頼の件を」
追加の発言がないのを見て、大鹿島が口を開いた。どうやら今回は依頼事項があるようだった。
「はい。・・・都内で怪異の発生情報が寄せられており、祓えの依頼が1件来ております」
明日香の発言に、九条が首を傾げる。
「あれ?退魔依頼なら祓衆の仕事では?」

基本的に祭部衆は結界生成や祭祀の調査、呪術開発などが主な所掌範囲である。純粋な退魔依頼は、攻撃特化の祓衆が受け持つ事が多い。

「そうですね、本来ならばそうなのですが、目撃情報から、何らかの呪術が絡んでいる可能性があるということでこちらに依頼が回ってきたようです」
明日香がその疑問に的確に答える。確かに呪いの類が関わっていると、それは一種の「祭祀」であり、祭部衆が第一に受け持つことに異論はない。

「目撃情報とは?」
先程まであまり関心がなさそうにしていた宝生前が口を挟む。『見た目』だけで呪術絡みと判断される怪異に興味を持ったのだろうな、と九条は思った。
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