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天狐あやかし秘譚

第121章 一気呵成(いっきかせい)


☆☆☆
少し、後日談をお話しよう。

後日の陰陽寮の調査によると、山の主を名乗ったあの『狼の変化(へんげ)』は、地元では『モノ』と言われ昔から畏れられていたらしい。涼華の母の実家の近くの山に住んでいて、自分の山に入り込んだ人間や獣を喰らっていたというのだ。『モノ』が住んでいる山は当然、危険な山とされ、大昔から『禁足地』と言われていたのだという。

しかし、涼華の母は若い時分にその地を離れたため、『禁足地』の習わしをよく理解していなかったようなのだ。そんな母が娘である涼華を連れて実家に帰った時、娘といっしょにそこに入りこんでしまったのだった。

結果、母は『モノ』に食われ、涼華もそいつに呪的な『印』をつけられてしまった。この時、涼華が見逃されたことについて、涼華自身は、『母が命乞いをしたから』だというが、おそらくそれはあまり関係がなかったのだろうというのが陰陽寮の見解だった。『モノ』は単純に食べ頃になるまで涼華を泳がせていただけだったのだ。

10年というのは、そいつが判断した涼華の食べ頃だったわけだ。そして、その10年目がたまたまあの日であり、モノは涼華を喰うために山から街に降りてきたということだった。

そして、丁度『モノ』が涼華を喰うために異界に閉じ込め、襲いかかっていた時、どういうわけか、母がそれを感知して、結界内に侵入してしまったのだ。それについては、佐那曰く、『朱音殿の特別な力のなせる技にございます』とのことだった。

どうやら私や母には、目に見えないものを感じ取る、『巫女』のような力があるらしいのだ。佐那姫はそれを『結びの巫女の力』と言っていた。

私が『結びの巫女』だ、というのは、かつてダリにも言われたことがある。

試しに彼にも『結びの巫女』とは何かと尋ねた所、何百年かに一度、人の中に現れる特別な力の巫女だと言っていた。そして、母も私もその力を持っているのだが『力自体は、綾音のほうがずっと強い』というのがダリの言い分だった。

この『結びの巫女』のことについては、それ以上のことはダリにもよくわからないようだった。私自身も、自分のことなので気にはなるが、とりあえず、調べるのは後日にしようということで今は落ち着いている。

さて、涼華に話を戻そう。
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