第121章 一気呵成(いっきかせい)
佐那の爆発的な成長が終わる頃、光の奔流も収束していった。大量の光が失せたことで目が見えるようになったのか、黒い獣がやっと目の前に現れた者の姿を認識したようだった。
「ぐうるるるぅうう・・・」
おそらく獣はそれを脅威とみなしたのであろう。ぐいと鼻面にシワを寄せ、威嚇するかのような低い声を上げる。そして、涼華を脇に追いやると、牙を剥き出し睨みつけていた。
「お前・・・何者・・・!」
獣がそう問うたのも無理はない。そこには、年の頃は18ほど。少し前までのちんちくりんの面影はほとんど消え失せた美しい娘姿(しかも巨乳)の佐那が立っていたからだ。
ダリも妖力をみなぎらせているときは全身が薄っすらと光り輝き、雷を纏う姿になるが、今の佐那も同じだった。私の目から見ても明らかなほどの大量の妖力が全身から溢れていた。ただダリと違うのは、そこに纏っているのが雷ではなく、重低音の振動・・・とでもいうようなものだという点だ。まるで地の底から響くような威圧感を放ちながら、彼女は今一度の名乗りを上げる。
「我が名は地狐・佐那姫!朱音殿、綾音様に対する数々の非道・・・絶対に許さないっ!!」
彼女は両足を大地を掴むように開き、重心を深く落とす。右腕は鳩尾(みぞおち)の前で鋭く構え、左腕は後方へとしなやかに引かれていた。その両の指先は、刀のように真っ直ぐに伸びた「手刀」の形を作る。
その姿は、熟達した格闘家のそれを思わせた。
迸る妖気が全身を覆い尽くしていく。それは彼女の激しい怒りの感情を表しているようだった。
「天狐の怒りは神の雷!
地狐の怒りは・・・大地の咆哮・・・だ!!」
ビリビリと大気を震わせ、佐那がその怒りのままに黒い獣に飛びかかっていった。