第121章 一気呵成(いっきかせい)
「こいつを食えばお前は叫ぶだろう?その声もいい・・・恐怖はなあ、人の子で言うところの『調味料』というやつだ。腸がもっと美味くなる・・・こいつの後は、そこの結界内の女を喰らおう。そして、最後にガタガタ震えるお前の腹を生きたまま掻っ捌いてやろうぞ」
こいつ、やっぱり!!
楽しんでいる・・・楽しむためだけに私たちを弄んでいたんだ!!
こ・・・このやろう!
佐那を見る。必死に身体を起こそうとしているようだが、もうその身体には力が残っていないようだった。ただそれでも必死に『朱音殿・・・綾音様・・・』とうわ言のようにつぶやき続けていた。
佐那は・・・佐那は、ずっとこんなふうに、母を、そして私を、私の兄弟たちを守ってくれていたんだ。誰の目にも映らないまま、感謝されることもなく、ずっと・・・。
ダリと別れたのは1000年以上前。それから、たったひとりで、私たちの家族を守り続けてくれていたんだ。
なんで、私はさっき、佐那のために男に抱かれてやれなかったのだろう?
なんで、佐那といっしょにダリとエッチをしてあげなかったんだろう?
佐那は、ただひたすらに母を、私を守ることを考えて言ってくれていただけなのに。そこに二心(ふたごころ)がないという彼女のセリフは、本当に心の底からのものだったというのに!
どうしよう・・・どうしよう・・・
このままじゃ、涼華さんが、母が・・・佐那が食われてしまう!
なにか、なにか方法はないか?
なにか・・・
ダリ、ダリだったらきっとこんなヤツ・・・
ダリ・・・?
そうか・・・もしかしたら・・・
その時、私の脳裏にひらめくものがあった。あれはそう、ホシガリ様との戦いの時・・・私はダリと・・・
私は息も絶え絶えに倒れている佐那を抱き起こした。私の予想が正しければ、多分、これでうまくいく・・・はずだ。
「佐那、聞いて・・・」
私は抱き上げた佐那に呼びかける。それに答えて彼女は薄っすらと目を開いた。その実体はもうほぼ透明と言っていいほどに微かなものになってしまっており、彼女の体の感覚はほとんど感じられなくなっている状態だった。
黒い獣は、そんな私たちを見て、『最後の悪あがき』とでも思ったのか、ただニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。
「綾音・・・様・・・」