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ネコの運ぶ夢

第8章 ネコは残業を待てない


☆☆☆
「へっくしょん!」
風呂から出た音子はさっきよりも元気になったが、それを見て安心したのか、俺の方が体調がおかしくなった。さっきからくしゃみが止まらない。

「ちょっと、風呂入ってくる」
風呂の追い焚きが終わったようだったので、俺も風呂に入ることにした。俺の体もいい加減冷えていた。

部屋着に着替えた音子は、やっぱりまだ寒いのか、布団にくるまって、ころころしている。

「ああ・・・音子が、お背中をお流しします!」

いや、やめろ。これ以上、俺を刺激するな。
ん?そう言えば・・・。

「よかった・・・口調が戻った」
「え?」
音子がちょっと目を見開くようにする。鳩が豆鉄砲食らったみたい、という例えがぴったりな顔だ。
なんだ、気づいてなかったのか?

「一人称・・・『音子』に戻った。少し、安心した・・・」

その時、俺はすぐに風呂場の方に目を向けてしまったから気づかなかった。
俺の言葉を聞いた音子が、この上なく嬉しそうな顔をしていたことに。

そして、多分、見てても、このときは気づかなかっただろう。
なんで、この時、音子が喜んだのか、ということには。
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