第6章 お料理ネコ

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夜中に、目が覚めた。
最近はこんなことはなかったのに、珍しい。
頭の下に市ノ瀬さんの温かい腕がある。腕が痺れる、と言っていたが、私はこれがあると本当によく眠れるから、これだけはどうか我慢して欲しい。

ほかは迷惑をかけないから・・・。

身体を起こす。夜光で時間が分かる時計を見ると、まだ夜中の２時だ。
横では、市ノ瀬さんが眠っている。市ノ瀬さんは嫌がるけど、少しだけ、近づいた。

市ノ瀬さんの体温がほんのり感じられる距離。今日は、うなされていない？

突然、泣いて、ごめんなさい。うまく説明できなくて、ごめんなさい。
びっくりしたよね。

窓の外を見る。月もない、暗い空。
私の生まれた日。

誕生日を祝ってもらった記憶は、一度しかない。６歳の誕生日。
その日は母がハンバーグを作ってくれた。後にも先にもこれ一度きり。

もしも、叶うなら、誰かともう一度誕生日を祝いたかった。

あんまりわがままを言えない、って思っているけど、今日は気を許してしまった。市ノ瀬さんがいつもいつも、あまりにも優しいから。つい、言ってしまった。

市ノ瀬さんはかなえてくれた。私の願い。

帰る家がある。隣で寝てくれる。
名前を呼んでくれる。

誕生日を一緒に過ごしてくれる。

「もらいすぎだよ・・・」

涙がまた、あふれてくる。ぬぐっても、ぬぐっても、いっぱいあふれてくる。

「大好き・・・・」

ごめんなさい、今日だけ、もうひとつだけ。
誕生日だから。
特別だから。

心のなかでいっぱい言い訳をした。

そうして、私は、眠っている、市ノ瀬さんに、
そっと、キスをした。