第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
「でもまぁ、繭莉引き抜かれたら、ウチも困りますけど」
「桐人さん、そこをどうかっ、繭莉ちゃんを俺にくださいっ」
「まぁ、繭莉次第としか言いようないですけどね」
勝己は、上鳴と桐人と呼ばれたバーテンダーの話を聞きつつ、グラスを拭く繭莉をチラリと見た。
彼女は、自分の話をされているにもかかわらず相変わらず眉一つ動かさずに仕事に没頭している。
愛想、なさそうだなコイツ。
勝己は、繭莉をそう総評した。
別に愛想を振りまく女が好きなわけでもないが、あまりにも愛想がないのは女としてどうなのかと思ってしまった。
「おい」
別に、上鳴の援護射撃をするわけでもないが勝己は繭莉に話しかけていた。
彼女は、仕事を続けながら「なんでしょう」と返事をした。
「テメェ、ヒーロー免許持っとんのか」
「……一応……」
「じゃあなんで酒作っとんだ」
「それは、自由じゃないですか。人の」
一応会話は成立している。
それを聞いていた上鳴が、勝己に耳打ちしてくる。
「なぁ爆豪、お願い!上鳴さんのサイドキックになってあげて♡って言って!峰田じゃダメだったんだって!」
「……テメェ……」
なんで俺がンな事言わなきゃなんねんだよ。
大体、峰田じゃダメだったって、なんだよ。
誰が言ったって、ダメなもんはダメだろ……アホかコイツ。
「だからテメェはアホ面なんだよ」
「えっ?どういう事?ヒドくない?」
ひでぇよ爆豪……と嘆きながら、上鳴がヤケ酒よろしくカクテルグラスを傾けた。
それを見て、まだグラスに口を付けていない事に勝己は気付いた。
どんな味がするのか、全く未知の世界だが仕方なく冷えたカクテルグラスに口を付ける。
「っ!」
勝己は、すぐにグラスから口を離した。
どうしてって、マンハッタンはアルコール度数が高い。
なので、飲みやすい方とはいえ酒慣れしていないと少し刺激的だろう。
こんなモン……美味いのか?
……きちぃわ……
「……爆豪、何その顔」
そう言ってきた上鳴も、何度目かは知らないが繭莉にサイドキックの話を断られて、お前こそ何その顔って感じの情けない顔をしているのだが。
「別に」
お酒がきつくて顔を顰めた事を悟られるのがなんだか嫌だったので、もう一度グラスに口を付けた。