第32章 新機、登場
「ごめんね?遅くなっちゃった」
「…早かったな」
「気になっちゃって…」
「そっか…」
「どうかした?」
「いんや?」
さっきとは逆の立ち位置になっていた二人。後ろから抱きしめる雅からはふわりと自身と同じ香りが鼻をくすぐってくる。
「…どうだった?インディのマシンは」
「んー、サイバーと違ってAI的な補助がないからそこだけ集中途切れたら危ないなぁと思ったくらい…」
「それだけ?」
「ん、あとはあるとしたらいつでも城からインカムで聞けるって事?」
「んだそれ…クスクス」
「あとは、行ってらっしゃいもお帰りも言えるって事。」
「マシンと関係ねぇじゃん」
「確かに…そうだね」
そう言いながらもそっと腕を緩める雅。隣に座ればパソコンを引き寄せる。
「…寝ないのか?」
「ん、今日中にまとめちゃうよ」
「そっか。」
そういうと加賀もカチッと煙草に火を点ける。
「…城は?寝ないの?」
「ん?一人にすること出来ねぇだろ」
「そう?大丈夫だよ」
「その言葉が一番信用できねぇっつぅの」
ふぅ…っと紫煙を吐き出しながらも雅の横顔を見つめている加賀にしびれを切らした雅は声をかける。
「…そんなにみられてるとやりにくい…」
「そ?」
「ん、」
「今までだってみられてたろ」
「今までは大抵一人でやってたから…」
小さくため息を吐きながらも目を細めて雅は返事をする。
「…それで?じゃじゃ馬って事は凰呀と似たようなところがあるって事?」
「まったく別もんだよ。」
「そうなんだろうけどさ?」
「凰呀、あれはあれで化け物だ。でも今回のは慣れちまえばどうって事ねぇんだろうけどよ」
「ふぅん」
「聞いといてその反応か?」
「だって乗ってないもの」
「それもそうだ」
煙草の煙をぼうっと視線で追いながらも二人の会話は新しいマシンの事だった。それでも雅にとってはずっと待ち焦がれた時間だったのだった。