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【刀剣乱舞】満ち欠けに、鶴。

第9章 『 小さな葛藤 』


肥前くんに案内され土佐組の部屋の前で足を止めた。

「ここ、ですか?」
「あぁ、ここだ……」

襖の向こうから、嫌な空気が――漂う。

本丸の中のはずなのに、霊力の流れが歪んでいた。
ゆっくりと、襖に手を掛ける。

「……開けるよ」

返答を待つことなく、静かに襖を開いた。

――闇。
部屋の中には明かり一つない、不気味なほどの暗さがあった。

夜でもない。
ただ、光が拒まれている空間のようだった。

「……本丸、だよね」

思わず声が小さくなる。

畳の感触は確かにあるのに、奥行きだけが異様に深い。
空間が、“別の場所”へ繋がっている。

「……ここ」

肥前が、不安を押し殺した声で続く。

「陸奥守と俺と先生の部屋だったんだがな……」

一歩、足を踏み入れる。
二歩、三歩と続ける。

暗闇が、じわじわと近づいてくる。

(……怖)

正直な感情が、喉元までせり上がる。
でも、引き返せない。

肥前くんは必死に前を向いている。
私は、袖の中で拳を握りしめ、さらに奥へ進んだ。

――その時。

ぎ、と。
何かが、きしむ音がした。

「……っ!」

闇の中から、ゆっくりと“それ”が現れる。

人の形。
けれど、動きが――おかしい。

関節が不自然な方向へ折れ曲がりぎこちなく引きずられるように進む。

まるで――
糸で無理やり操られているような。

「……陸奥、守さん?」

私の声に声に、それは反応しなかった。

虚ろな瞳。
焦点の合わない視線。

刀剣男士、陸奥守吉行の姿があったにもかかわらず。
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