第20章 仮面と素顔
「まずはサーモン、鉄板だな!で、これはイカ!あとはウニ!ウニ最高!俺は苦手だけどな!!」
トゥワイスが勝手に私の皿を寿司で埋めていく。
すごい勢いだ。というか、完全に“食わせる前提”。
『……これは、命令ですか』
「もちろん!!違うけど!!強制はしないが!けど食え!!」
『……』
(どうして、こんな展開になるの)
ちらり、と視線を横に向ける。
コンプレスと目が合う。優しげな目。
「空気を読むのも、大事だよ」
わかってる風に笑って言うその一言が、地味に効く。
(……これもう、逃げられないやつ)
覚悟を決めて皿に目を落とすと――
一番上に、どっかりと鎮座するウニ。
(……よりによって、これ)
小さくため息をついて、私は箸を取り、ウニの寿司をつまむ。
一瞬だけ口元まで運び――そして、すっと横に差し出した。
『これ、あなたが食べてください』
「えっ!?」
固まるトゥワイス。
「お、俺!?なぜ!?俺、苦手って言ったよな!?なぁ!?」
『……苦手同士、わかり合いましょう』
「いやいやいやいや俺の皿に置くな!?食えって言ったのお前だぞ!?」
『私は食べるとは言ってません』
「うわあああああ!ツンデレだ!!最高!!でもこのツン、強すぎじゃないか!?でもキライじゃない!!」
騒ぎながらも、結局トゥワイスはウニを受け取ってくれた。
不服そうにしながらも、きちんと食べてくれるあたり、やっぱり優しい。
その横で、トガがにこにこと笑っている。
「ウニ、苦手なんだね♡」
『べ、別に……』
ごまかすように目を逸らすと、
ふいに自分の手に意識が向いた。
――右手の薬指。
手袋の下にある指輪を、そっと確かめる。
(……何やってるんだろ、私)
気がつけば、笑ってた。
ほんの少しだけ、口元が緩んでいた。
そんな自分に驚いて、慌てて表情を引き締める。
けど――トゥワイスが、それを見逃すはずがなかった。
「今、笑ったな!?おいおい、笑ったぞこの子!!おれをいじめて笑ったな!?最高だな!仲間感出てきたな!?なぁ!?」
私は、返す言葉もなく、顔を逸らした。
この場所は、敵地で。
この人たちは、ヴィランで。
でも、心のどこかで――ほんの少しだけ、温度を感じてしまっている。
(……困ったな)
胸の奥が、静かに、でも確かにざわついていた。