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【ヒロアカ】re:Hero

第20章 仮面と素顔



会合が終わり、空気が抜けたような静けさが戻る。
その場に残るのも不自然と判断し、私は無言で退出した。
薄暗い廊下を歩く。誰の足音もしない。
ただ、自身の呼吸と、靴の音だけが響いていた。

(……今日は、もう終わり。
情報は整理して、夜中に公安に……)

思考の糸を繋ぎながら、用意された一室の前で立ち止まる。
――幹部にだけ用意された、鍵付きの個室。

手を伸ばし、ドアノブを――

そのときだった。

「っ――!」

背中に、ぐっと強い力が加わった。

『――!』

抗う間もなく、背中から室内へ押し込まれる。
バランスを崩し、床の上へと倒れ込む形になった。

ドアが閉まり――
カチャン、と鍵がかかる音がした。

(……誰!?)

身を起こしかけた、その目の前に――

「よぉ」

低く、どこか飄々とした声。

「まさか、今夜また会えるとは思ってなかったぜ。カゼヨミ」

視界の奥、逆光の中からゆっくりと歩いてきたのは――

荼毘。

青黒い炎の気配を纏いながら、壁に背を預けるように立つその姿は、
まるでここが“彼の部屋”であるかのような余裕を持っていた。

『……っ……』

息が詰まる。
逃げ場はない。鍵はかけられ、私の後ろには壁。

けれど、何より厄介なのは――
この男が、疑いの目を隠しきれていないということ。

(……ここで取り繕えなければ、終わる)

静かに息を整え、私はわずかに眉を寄せながら荼毘を見つめた。

『何のつもりですか……?』

次の一手が命運を分ける。

けれど、荼毘はその問いにすぐ答えなかった。

ただ、唇の端をゆっくりと吊り上げ――
あの、底の見えない笑みを浮かべる。

「……少し話そうぜ」

その声は、まるで“この密室”が始まりであるかのように、静かに空気を切り裂いた。
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