第18章 「血と花の話をしましょう**」
あの顔。あの声。あの微笑み。
(――ぞっとした)
綺麗な顔だった。
女の人みたいに、整っていて。
けれど、その奥に何が潜んでいるのか、
どこまでが“仮面”なのか、一切見えなかった。
感情の揺らぎがない。
言葉に温度がない。
人間のはずなのに、人間に見えなかった。
底が知れない、なんて言葉じゃ足りない。
近づいたら引きずり込まれる、そんな感じがした。
できれば、もう二度と会いたくない。
(……でも)
(こんなふうに、関係ない人たちまで巻き込むようなことをするなら)
ぎゅっと両手を握りしめる。
恐れよりも、迷いよりも、今は――この怒りのほうが、ずっと大きい。
(……放ってなんかおけない)
その想いだけが、確かにそこにあった。
「さん。あなたには別の仕事をしていただきたい」
顔を上げると、七海さんが真っ直ぐこちらを見ていた。
「……別の仕事?」
「ええ」
七海さんは眼鏡の位置を整えながら、淡々と続ける。
「明日、補助監督の新田さんと共に、被害者のご家族に話を聞きに行ってください」
「死ぬ直前に接触した人物がいたか、見知らぬ小包を受け取ったとか、些細なことでも構いません」
「この植物化は、何らかの術式によって引き起こされたもの。彼がどういう経緯でこうなったのかを、調べていただきたい」
七海さんの言葉に、どうしようもない悔しさがこみ上げてきた。
「……私が、弱いからですか?」
気づけば、言葉が口をついていた。
七海さんが少しだけ目を細める。
「そうは言っていません。これは――」
「囮でも構いません! 私にだって……!」
先生がその先をそっと手で制す。
「。前線に出て叩くだけが、呪術師の仕事じゃないよ」
「経緯がわかれば……もう誰も、こんな目に遭わなくて済むかもしれない」
(……それは、わかる。でも――)
胸の奥に、まだ言い足りないものが残っていた。
「でも、先生っ……!」
言いかけた瞬間、先生の視線が鋭くなった。