第5章 互いが住む世界
千明side
「もしもし、電話に出れずすみません。」
入浴を済ませると、お父様から電話がかかってきていた為折り返しかけ直した。
佐野にはあまり聞かれたくないと思い自室に戻って話すことにした。
『随分遅かったな。まぁいい。来週家まで迎えに行く。分かってるな?綺麗な格好で準備しておけ。』
「あ、あの!」
電話を一方的に切られそうになり慌てて止めた。
設立記念のパーティーではきっとお父様とお祖父様が決めた相手に俺を会わせるつもりなんだろう。
でも今、俺には佐野がいる。
佐野以外には誰も要らない。
「俺、今お付き合いしてる人がいて。」
声が震える。
なんと言われるか怖くなっていた。
「だからその……誰も……」
『その相手は優秀な男なのか?体目的だけじゃなくて?きちんとαの子供を産めるのか?稼ぎは?どこの会社の人だ?』
「いや、あの……わからない……です……でも本当に愛しているんです。」
しばらくの沈黙が続いた。
受話器の向こう側で頭を抱えてるお父様の姿が目に浮かぶ。
『愛?そんなもので優秀な子が産まれるなら苦労はしないんだよ。馬鹿な事を言ってないで別れろ。いいな。切るぞ。』
「あ、まっ!」
切られてしまった。
本当に俺を子供を産ませるための物としか見てないんだ。
悔しい。
モヤモヤとした感情を抱いたまま、佐野の部屋に戻った。
後ろから抱きついてきた佐野の温もりが苦しい。
心地いいはずなのに。
パーティー会場でちゃんと直接話そう。
そして相手とのお見合いもお断りするんだ。