第13章 黒猫、揺蕩う
「いや、むっちゃ煙たがられたから矯正して向こうでは標準語。こっち戻ると殆ど関西弁やし気ぃ抜けて戻ってまうんよ。楽やし。」
「あー…、向こうだと苦手な人多いんだ。圧強いもんね関西弁。」
「え、ごめんスナリンには標準語で喋ろうか?」
「いや今更。というか俺はもう慣れてるよ。」
「ほんならえぇか…うわっ。」
呑気にスナリンと話していれば今度は後ろから両手首を引っ張られ身体が傾く。手首を引いてたのは想像通り侑と治で2人に背中がぶつかった。ぶっすー、と顔を顰めて私の両肩に顎を乗せ、相変わらず分かりやすく不機嫌なご様子。…クロが2人居るみたいだな。スナリンはすかさずスマホを取り出しこの光景を真顔で動画に収めようとする。カオスか?
「なぁに俺ら放っといて楽しそうに話しとんねん!連れ去るぞ。なぁサム!」
「連れ去られても私こっちある程度分かるよ。」
「そういうことちゃうねん。あ、この角右な。」
「あーもう嫌やーー!俺が他の男と楽しそうに話しとるの見たぁ無いー!このまま家連れ帰って独り占めしてたいんやけどー!!」
「急に5歳児おんねんけど治の兄弟情緒大丈夫そう?」
「手遅れやろ、その辺捨てとけ。」
駄々を捏ねながら後ろから私に抱き着き額を肩にグリグリ押し付けてくる侑。昨日の大人びた表情は何だったんや。顔の振り幅エグいでこいつ。スナリンは爆笑しながら動画撮ってるし。やめろて。
そうこうしている内に目的の場所に着いた。そこは雰囲気のあるレトロ喫茶で、ディスプレイには美味しそうなナポリタンやドリアなんかが並んでる。その中でも一際目を引いたのが、猫の形をした分厚いパンケーキだ。ココア生地なのか焦げ茶色で、描かれている顔が若干ブサイク気味なのがめっちゃくちゃ味があっていい。
「ここがいい!ここ入ろ!」
「お前ほんまに猫好きやなぁ。」
「昔野良猫追い掛けて迷子になっとった幼なじみおらんかった?」
「ちょっと覚えてないですね、辞めてもらって良いですか?」
また侑は余計な事を…!小さい頃なんて誰しも好奇心旺盛で無鉄砲でしょうが。
立地のせいか人も少なくすぐに入れた。ソファと椅子で向かい合う席に通されると誰がどこ座るか早々に揉めたが結局ジャンケンで私とスナリンがソファ、双子が正面の椅子に座る。