【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第8章 ※歪み
ギュッと、握り拳に力が入る。
「沙良…?」
梅君が不思議そうに覗き込んできた。
『かっこよくなんか…ないよ。
自分が何をしたいのか…わかってなくて…』
今日条君と何をした?
条君への気持ちの変化は自分で何となくわかってはいた。
けれど…
条君が自分の元から去ろうとした事がわかって必死に縋った。嫌だと思った。怖かった。
ずっと一緒にいてくれるのだと思っていた。
私は条君を振り回している。
そんな人間がかっこいいわけがない。
ポロポロと涙が溢れる。
「え……沙良?…」
梅君の戸惑う声色に益々自分が情けなくなる。
梅君は短く呼吸すると、口を開いた。
「…わからなくなっても、いいんじゃねぇか?」
『…っ……』
「そりゃ、生きてりゃ色々悩んだり、考えたりすることもあるよな。それはさ…」
優しい大きな垂れ目と視線がぶつかる。
「それだけ真剣に、物事を考えてる証拠だと思うぞ。」
ワシワシと頭を撫でられる。
「うん!悩め!若者よ。たくさん悩んで、たくさん泣いて、どうしようもなくなったら…」
グイッと頭を引き寄せられた。
『…っ……』
「胸でも肩でも貸してやるから。」
『ありが…とう…』
この大きな手が好きだ。
この優しさが。
包容力が。
結局公園には行かず、元来た道を戻っていった。
ーーーーーーーーーーー
『ごめんね…ありがとう。』
「いや。」
店の前で向き合って話し始めたけれど、さっきから全然目が合わないことに不安になる。
『梅君、今日は…わざわざありがとう。』
「………」
『…梅…君?』
梅君はうなじに手をやると、深く溜息をついた。
『……梅君。』
怒っているのか、呆れているのか、梅君の態度が不安になって小さく名前を呼んだ。
「…ごめん沙良。黙ってるのやめた。
俺、お前が十亀とさっきまで何やってたか…分かってる。」
『…っ……』
一瞬、心臓がギュッと掴まれたように苦しくなった。
鋭い視線。
『………』
梅君の真顔が怖くて汗が噴き出す。
どう言ったらいい…?
「ごめんな…俺もガキじゃねぇからさ。
顔とか服とか…見たらすぐわかる。」
手を伸ばし、目の下にそっと触れる梅君。