第5章 リベロとエース
「おい逃げるな!」
「だってお前怒ると怖いんだもん!」
「今別に怒ってないだろ!」
「…えと、バレー部の方、ですか?」
先生かと思った。
「あ、ああ、元な」
力無く笑う大きい人。
「烏野のエースだ。へなちょこだけどな。名前は東峰旭。俺と同じ3年だ」
「あ…。バレー部のマネージャーになりました、1年の永瀬鈴です」
「マネージャーも増えたのか、良かったな…」
「…」
「あ、あの!あたし先行ってますね!」
「お、おお。ありがとうな、鈴」
何やら少し重い空気になり耐えきれなくなったあたしはそそくさとその場を離れた。
何に対してのありがとうかはわからないけど、多分気を遣わせたと思ったんだろう。
すみません、空気感に居た堪れなくなっただけです。
「あれ、鈴なんか遅かったね?」
体育館に入ると先に来ていた忠に声をかけられる。
「まぁちょっとね。そろそろ澤村先輩も来ると思うから早く準備運動しちゃおう」
「?うん」
「またなんかあったんじゃないの?」
「うわ!びっくりしたっ。何でも無いよぉ、過保護幼馴染くん」
「…ふーん」
不思議そうな忠の後ろからニュッと現れた蛍が問いかけてきた。
まだ戻ってくるとかそーいう話まで聞けなかったし、言わない方がいいと思い、旭先輩と遭遇したことは伏せておいた。
その人を疑うような顔も居た堪れなくなるからやめて欲しい。
少しするとジャージに着替えた澤村先輩が体育館に入ってきた。
「おお鈴さっきはありがとな」
「いえいえ、別に空気読んだわけじゃありませんから」
「あ、いやー…そうじゃなくて。鈴が引き留めてくれたおかげで少し話ができたから、さ」
「!あ、あ。いやぁ、実は…その」
「?」
「せ、先生かと思って…」
「ぶはっ…!確かにあいつ、高校生には見えないよな」
「す、すいません!アホで…。その、旭先輩は戻ってくるんですかね?」
「!いやいや、結果オーライだし助かったよ。まだ分かんないけど…、戻ってきてくれるといいな」
そういうと澤村先輩は寂しそうに笑う。
「初対面の旭には名前呼びか、俺も大地でいいぞ」
「え!あ、はい!大地先輩」