第3章 転
それからどれくらいの間呆然としていたのでしょうか。気づけば日は落ち、閉園も間近、という頃合いです。動物園を包む赤い夕陽を眺め、1匹物思いに耽っていたとき。モルモットは、不意にひょい、と持ち上げられました。
“なにごとでちう?!”
すぐに何が起きたかわかりました。そう、あの女性がモルモットを自分の子にするために戻って来たのです。
“あら、なんて可愛い子。この子しかいない、呼ばれた気がする”
“やったでちう。気づいてくれていたんでちう”
そして女性はモルモットを優しくぎゅっと抱きしめました。その女性からはとてもいい匂いがしました。
“今日から君は我が家の仲間入りだよ。私はめぐみ。よろしくね。この子の名前は何にしようかなあ”
女性、つまり、めぐみはそんなことを言いながらレジに向かい代金を支払い、モルモットを連れて家に帰りました。