第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒
正確に言えばスカートのポケット部分だった
私は布の上から揺れている箇所を押さえつける
轟くんもそれに気づいたのか目を開き、接近していた体を起こす
「…スマホか?鳴ってるぞ」
轟くんはスマホのバイブと勘違いしてるみたいだけれど
私はそこにあるのがスマホじゃないことを分かっている
だから取り出すことはせず、その場しのぎの言い訳を作る
『あ、このあと、友達と約束があったんだった
だから今日はここまでで大丈夫!また明日ね!』
私は轟くんの顔を見ずに背を向けて駆け出す
轟くんから離れても離れてもスカートの中でそれは蠢き続ける
私は恐る恐るポケットに手を入れて、羽根を取り出す
一点の曇もない紅色は、影をつくり濁った濃い赤紫色に見える
小刻みに揺れる羽根を両手で包み込み、胸の前で強く抱き締める
すると羽根は動かなくなり、大人しくなった
でも私は引き続き両手で握りしめ祈るように体を丸めた
ねぇ、啓悟くん
わたしどうしたらいいの??
こんな弱くて甘えた気持ちを轟くんに抱きたくないのに……
轟くんが私に触れるたびに縋りたくなるの
離したくないから縋りたくなる
轟くんにとっては当たり前なのに
わたしはそれが当たり前にできない
啓悟くんに会いたいよ
わたしこのままじゃおかしくなる
いつか咲いたらいいと思っていた蕾が
いま咲き始めてる