第7章 𝔸𝕟𝕖𝕞𝕠𝕟𝕖
なんでよりによって焦凍くんかなー
エンデヴァーさんの息子さんとか複雑すぎだろ
…恋敵にしたくない相手NO.1だよ
『…もう恋とか言ってる次元じゃないか…ってマジか』
まーた来てんの、あの子
懲りないねーオレも大概だけどさ
オレは雄英の最寄り駅であろう場所に羽を降ろす
こんなとこで目立つわけにいかないけどいっか
彼女はオレに気付くなり体をビクつかせ、顔を強張らせる。見知らぬ制服に焦げ茶に染めたショートボブを揺らす
先週見たまんまだからすぐわかった
『また何かしようって訳?
それならオレも容赦しないけど』
ジリジリと歩み寄るとその子はいかにも強がるように口元を緩ませる
自然と視線が鋭くなっていくのがわかる
「な、なに?警察にでも突き出そうって?」
『…ハハまさか
警察なんかじゃ任せられない、完全な私情でアンタを消すかも』
「ヒッ」と喉の奥から出る悲鳴が耳に届く
恐怖に歪んだその顔を見ても何も感じない、たった一人の子の笑顔しか興味ないんだよ
「ち、違うわよ…何かするために来たんじゃない…
ただ見に来ただけ…」
「…その…焦凍くんを」
モゴモゴ口を動かす彼女を見て、唖然とする
…まだ好きなのか
とりあえず肩の力を抜き、新しい酸素を取り込む
彼女が強行に及んだのは遡ること一週間前のことで
ひかりちゃんに会いに来たのは昨日だけど
実は一週間前からこの辺にちょくちょくやって来てた
もちろん目当ては ひかりちゃん
いや別にやましいこととかなくてほんとに見守ってただけ。下校中とかさ、よく焦凍くんといて何度顔を顰めたことか
そんなある日、二人を背後からつけ狙う人影を見掛けた
初めは気の所為だろうと思ってたがそいつの視線は明らかに ひかりちゃんに向けられてて、しかも殺意ダダ漏れ
気付けと念じても ひかりちゃんは笑ってるもんだからこっちも笑えてくる
二人が電車を待ってるときついにそいつは行動に移す
ひかりちゃんの背後にさり気なく移動し、両手を伸ばす
…突き落とそうってことかよ
そいつが動くより先に剛翼を飛ばして、女を捕らえて駅から引きずり出す
何が起こったか分からないような顔をした彼女はオレを見た途端真っ青になり逃げ出していった
まさかまた会うことになるなんて