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花水木が咲く頃に ꕥヒロアカꕥ

第7章 𝔸𝕟𝕖𝕞𝕠𝕟𝕖




「…観に来てほしいの?」

しまった、と思った
昨日会いに来てくれたからついつい欲が出てしまった
私の都合で彼を呼ぼうなんて…

『ううん、やっぱり大丈夫!
啓悟くんが自慢できるように頑張ってくるからっ』

「じゃあ優勝しちゃう感じー?」

『んーそれはムリ』

「なんでよ笑」


建物外から聞こえるガヤガヤと騒がしい音が耳いっぱいに広がる
……沢山の人が来てるんだ

「観に行けないけど、終わったあと会いに行くよ」

『ほ、ほんと!』


「…本当だよ、相変わらずカワイイ反応してくれるね」

だって本当に嬉しいから
胸の中を覆っていた霧がじわじわ剥がれていく
心が軽くなっていくような、そんな感覚


『じゃあ待ってるねっ、また』

「うん、中継から応援してる」


通話を切り、スマホを胸元に当てて深く息を吸い込む
彼にこのあと会ったら、結果がどうであれ笑顔で話そうって決めた
きっと彼も笑いながら私の頭を撫でてくれると思うから



『よし戻ろ…!…ってあれ?ここどこ』

喋りながら夢中で歩いていたら、控え室からだいぶ離れてしまった
どこまでも続く廊下と真っ白な壁と床だけがそこにある
…どうしようもうすぐ入場なのに

こうなったら誰かに連絡するしかない、手元にあるスマホで操作しようとしたとき


「どうしたの、なんかトラブルでも?」

スマホから顔を上げ、声の主を視界に収める
薄い黄色のストレートヘアで、同じく雄英の体育着を纏っている
眠たそうな目とニヒルな微笑が特徴的だった


『あ、迷子になっちゃって…』

「迷子?」

『あ、はい…』

やばい、完全に引かれた…
同じ雄英生としてものすごく恥ずかしい
その人は「あぁ、なるほどね」と口にして、私に向かって手を差し出してくる

「いいよ、僕で良ければ連れっててあげるけど」

『あ、ありがとう!助かる!』

私は差し出された手を握手感覚で取り、つい勢いで上下に激しく振ってしまう

「いたた…A組はほんと調子のいいヤツばっかだな」


ボソッと放たれた声に首を傾げてると「いやこっちの話」と言われる

…今日は一年だけだからこの人B組なのかな
なんて考えながら後ろをついていくとあっという間に控え室に辿り着く


『ほんとっにありがとね!!』

「いいよ、じゃあまたね 秋月 さん」


あれこの感じ…前にも…?
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