第5章 あの人と出会ってしまった
「悟の気持ちを汲んであげようじゃないか。食べ終わったのだし、そろそろ行こう」
五条くんの牽制と夏油くんの促しによって、硝子と歌姫先輩はお互いに顔を見合わせた後
「「絶対に寧々(ちゃん)を泣かせるなよ!」」
と言って、渋々立ち去った。
「…はぁ、まさかあんなうるさいのに出会うとは思ってなかった……。癒されてたのに一気に疲れた…」
五条くんはしおしおとテーブルに項垂れた。
「お疲れ様、いかに五条くんが信頼されていないかが分かったわ」
「寧々、その言い方は心にくる…。はぁ…もう…飯食って切り替えよ…。俺、海鮮丼な」
席に置かれたメニュー表をパラパラとめくると、海鮮丼が大きく掲示されていた。
「人気ナンバーワンなのね。私もこれにしようかしら」
「おっ、俺と同じの食べたいんだな!よし、注文してくる!」
人気のある定番商品だから食べたいのであって、お揃いにしたいわけではないのだけど…。
なぜか五条くんは落ち込んでいたのから一転、張り切ってカウンターに向かった。
「お待たせ、寧々。食べようぜ」
「ありがとう、ご馳走になるわね」
やがて2人分のプレートを持って戻ってきた五条くんに、約束通りお礼だけしっかり言って、手を合わせる。