第5章 あの人と出会ってしまった
「寧々っ!俺は事前に調べてきたんだぞ!」
「でも書いてあるから。五条くんの説明よりも凄く詳しく」
「くっそ、博識な俺を見せつけるチャンスだったのに」
五条くんに博識なイメージは全く持ってなかったけれど、下調べをするくらいには計画を練っていたことは分かった。
「五条くん、いつまでも悔しがってないで、早くラッコも見たいのだけど」
大水槽の次の展示は愛らしい2匹のラッコ。
「あ…」
体長の大きいオスと見られる個体が、一回り小さいメスのラッコの手を握った。
小さなおててをバンザイしながら、2匹仲良く水面を漂う。
「寧々、俺達も…」
「嫌」
前回は別々に泳いでいたのに、寄り添ったまま離れようとしない。
「この子達、夫婦なのね」
時間がなくて読み飛ばしていた前回と違って、一つ一つの解説をゆっくりと読めるのはいいことね。
「寧々、夫婦になったら手を繋「絶対に嫌」
五条くんは口では手を繋ぎたい、なんて言いながらも、私が拒否することが分かっていたのか
手を差し出しはしなかった。