第9章 番外編/濡れてないと…
「なっ…!?」
階段を登り始めた寧々が、体をギュンッと後ろに仰け反らせて、びっくりした顔を俺に向ける。
「な、なにを言ってるのよ、五条くん!」
木陰を揺らす風が寧々の髪をなびかせた。
それで驚いた顔はますます見やすくなって、口をあんぐりと開けて顔を真っ赤にする寧々。
日が落ち始めた鮮やかな夕焼けが寧々の頬まで染めている。
「どこまで変態なのよ…っ」
「今こうしてる間にもタッちまってんだよ。仕方ねーだろ。好きなんだからよ」
寧々が驚きながらも訝しげな目で俺を見ている。
俺の瞳…もとい六眼にはやっぱり吸引力があるようで、六眼を意味ありげに見つめている。
……すんげぇ凝視するじゃん、寧々。
ただ行きと明らかに違うのは、視線を僅かながらにずらして寧々が俺のモノをチラ見したこと。
「こんな感覚になるのは寧々といる時だけだよ。あ、照れた?照れてんの?寧々」
夕焼けよりも真っ赤に、夕焼けすらも置き去りにした寧々は耐えられなくなったのか、ふいっと顔を逸らした。