第5章 流星群が誘う旅
朝の陽が登り始める。鬼殺隊に入ってから何度も経験してきたが、帳のような夜が明けていく時はなんと素晴らしい光景だろう。
水田に映る朝焼けの美しさに目をやった。杏寿郎の周りでは、隠が事後処理で忙しなく動き回っていた。
現在、杏寿郎達がいるのは戸塚村にある今は住む人のない民家の前である。家の近くには、水を湛えた水田が広がっている。この家に鬼が現れるとの知らせを受け、杏寿郎達は討伐に訪れた。
鬼は一体ではあったが、血気術が厄介だった。始めの姿は男のようだったが姿を変える。甲の杏寿郎、杏寿郎の継子の甘露寺蜜璃の二人は、闇の中蠢く影を追う。
「私、行きます!! 」
甘露寺蜜璃は炎の呼吸の構えをする。
「炎の呼吸 壱の型 不知火!! 」
蜜璃は渾身の力を込めて師範から教わった不知火を繰り出した。放った斬撃は鬼の身体をかすめたものの、外れてしまった。
その途端、古びた畳の上をバリバリッと這う音がした。爪は畳を切り裂いて、唸り声がする。
「きゃーっ⁉︎ 外しちゃいましたぁ!! 」
甘露寺蜜璃の前に迫ってくる鬼。人のような獣のような姿は、暗闇ではよく見えず、四本の脚で勢いよく蜜璃の前に襲いかかる。
赤い口の中がよく見える程に近い…!蜜璃は目を閉じそうになり思わず身を固くした。
「煩わしい鬼狩りめ。鋭い爪と牙とで切り裂いてくれようぞ」
「いやーっ! 」
鬼殺隊に所属して間もない蜜璃は、まだ咄嗟の判断に慣れていない。状況判断に優れた師範が庇ってくれる。
「甘露寺、慌てなくて大丈夫だ」
横で見ていた杏寿郎が素早い太刀捌きで鬼を切り裂いた。毎回、師範の日輪刀からは炎が吹き出しているように見える。
…どうしたら、あんな風に綺麗な炎がでるのかしら…。
鬼が暴れた後の廃墟の一階部分は崩れかかっている。隠が到着するまでの間、蜜璃は自分の刀を眺めて小さなため息をついた。
杏寿郎は家の中を確認して回っている。囚われた人がいないか、死体が転がっていないか、師範は抜かりがない。ミシミシと床の音のする室内を歩く師範は、逞しくて蜜璃は胸がキュンとした。
「甘露寺、怪我はないか? 」
階段を見つけて上る師範が気遣ってくれる。
「はい!大丈夫です!師範」
師範の後を追いかけて、二階に続く階段を駆け上がった。