第3章 必要とされないモデル
それから、もっと幅広く職探しをしてみたけれど、若い女性が来るような場所は避けてしまいがちになっていた。
アパレルのお店やメイク用品のブランドなど、どうしてもひなたの顔を知っている人が集まりやすい場所は恥ずかしくて、できれば人に会わないような仕事に目が向きがちだ。
「でもなぁ、社長は広い世界を見て来いって、言ってたなぁ」
今日も募集の情報を探りながら、ため息をついた。
自分の部屋に朝からこもって悶々としていたら、テーブルの上に置いていたひなたの携帯が鳴り出す。
「ん、誰だろう…おじいちゃんだ! 」
祖父の輝利哉からの電話だ。輝利哉は日本最高齢でありながら、携帯を使っている。着流しの胸からスマホを取り出す様子は、なかなかスマートで素敵だ。
「あっ、おじいちゃん!どうしたの? 」
悶々としている時に、祖父の声を聞くと嬉しい。
「ひなたや、変わりないかな? 」
「うん。おじいちゃんは? 」
「とても良いよ。ひなた、今日は良いお天気だね。もし時間があるなら、家に遊びに来ないかな」
おじいちゃんが家に来るように言うのは珍しい。今までは、忙しくお仕事をしていたひなたを気遣い、声をかけないようにしていたのかもしれなかった。
「うん!行く行く。朝ごはん食べたら急いで行くね! 」
気分転換に、おじいちゃんの屋敷に遊びにいきたくなって、ひなたは元気に誘いに乗った。
「おじいちゃん、何か持って行こうか」
おじいちゃんの好きな羊羹でも買って行こうかな。
「ありがとう。ひなたが来てくれるだけで嬉しいよ」
おじいちゃんの優しい声が耳に流れ込んでくる。
ひなたは穏やかな気持ちになりながら電話を切った。