第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「ひなた。随分走ったようだな! 」
「えっ…⁈ 」
足元の草がサワサワ揺れて、影が差したと思ったら師範の声がした。反射的に顔を上げると、師範がこちらを見下ろしている。
「どうした?泣いているぞ」
「…っ煉獄…さん! 」
「む? 」
ひなたは立ち上がると煉獄さんに抱きついた。この草原で消えた煉獄さんが目の前にいる。抱き付かずにはいられない。
「…煉獄さん、どこにも行っちゃやだ…。消えないで…」
しくしく泣きながら涙声になっていた。
「…いなくなったのは君だろう。ひなた」
煉獄さんの静かな声がした。
「お館様を訪ねて行ったら、君は家に帰っていた。お館様はあの時、自分ももうひなたには会う事はないと寂しげに仰っていた」
「今朝も庵から消えたな」
優しい声で師範は言った。
「ごめんなさい。早く目が覚めたから、やる気出ちゃったの」
嘘だけど、煉獄さんが近くにいる事が嬉しかったから急いで涙を拭いた。
「そうか!ここまで来るとは驚いた。呼吸を上手く使って走ったんだな」
杏寿郎はひなたの頭をよしよしと撫でた。ひなたは驚いて目を上げる。
煉獄さんが優しくてビックリしたからだ。
普段も優しいけど、鍛錬で頑張ったからといって頭を撫でてくれたのは初めてだった。
「ひなた、腹が減っているだろう。良い物をあげよう、目を閉じて」
「うん」
ちょっとドキドキした。頭を撫でてくれた後に目を閉じたら、ドラマでは唇が降ってくる、事もある。