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『鬼滅の刃』桃寿情炎シリアル

第2章 華麗なる危険な時代


「ただいま戻りました! 」

 玄関をガラガラと開けると、懐かしい家の匂いがした。途端に帰ってきたのだという思いで胸が一杯になった。

「あ…あ…あ……」

「千寿郎!ただ今帰った!! 」

 杏寿郎の姿を見て、言葉を失っている弟の千寿郎に、元気に声をかける。

「七日ぶりだな。千寿郎、変わりなかったか? 」

 藤襲山で過ごしている間、何度も何度も家の事を思った。残して来た弟の事が気がかりで、何をしていても思い出していた。

 いざ、千寿郎の顔を見て、杏寿郎の胸は嬉しさと安堵で一杯になっていた。弟の変わらぬ姿を見ると、優しい言葉をかけたくなる。

「千寿郎、留守番をありがとう。よく家の守りをしていてくれたね」

 微笑んで弟に語りかけた瞬間、千寿郎は杏寿郎の元にかけて来た。

「兄上!兄上!!お帰りなさい!!お帰りなさい!! 」

 杏寿郎の胸に飛び込んで来た弟を、杏寿郎はしっかりと抱きしめる。

「…毎日、毎日…。母上にお祈りをしていました…!兄上がご無事であるよう、そればかりを願っておりました…っぅぅ…」

 おとなしい千寿郎が杏寿郎の胸で泣いて訴える。杏寿郎は弟の背中を撫でた。

「俺も毎日、藤襲山で千と父上の事を考えた。千が母上に祈ってくれたから、俺は元気に過ごすことができたよ。ありがとう」

 川で着物を洗う時、一人で山を歩く時、千寿郎を想ったように、千寿郎もまた、自分の事を想い、眠れぬほど心配してくれていた事を知った。

「ありがとう千寿郎。兄は鬼殺隊に入ることができた。さあ、一緒に母上に挨拶に行こう!おいで」

 差し出された兄の手を見て、千寿郎は絶句する。

 兄の手は豆が潰れて、酷く荒れていた。七日間、あまり眠らずに刀を握り過ごしていたのだろう。明るく笑う兄が、死と隣り合わせの場所にいた事を、千寿郎に伝えていた。

「母上に挨拶を終えたら、すぐに休んでください。心ゆくまで眠ってください!風呂を沸かしますから!! 」

 一週間前と比べると、随分痩せてしまった兄を見上げた。やつれてはいるけれど、兄は生命の輝きに満ちていた。

 やり切った人の輝きが、杏寿郎の全身から放たれていたのである。
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