第6章 ※ 再びあなたに逢えたなら
その週の金曜日。学校を終わらせたひなたは、いつものように家族で夕ご飯を済ませると、早々と自分の部屋に戻った。
大正時代に戻る為だ。心の中で決めていた日が今日だった。
スーツケースには、厳選した必需品を詰め込んだ。産屋敷家の皆へのお土産や、ひなたなりに向こうで役に立ちそうな物を考えて入れてある。
早めに部屋に帰ったのは、皆に手紙を書くためだ。数時間かけて書き上げ、それぞれ封筒に入れ封をする。
「…できた! 」
時計を見ると10時を過ぎている。輝利哉と両親、アオイさんと不死川さんと愈史郎に宛てた封筒をテーブルの上に置くと、ひなたは立ち上がった。
「そろそろ行こうかな…」
ふと、テーブルの上のスマホに目が行った。今日行く事を不死川さんには伝えていない。
…不死川さんに電話しようかな…。何も言わずに行ったら、不死川さん悲しむかな…。
携帯を取り上げ、不死川さんにかけてみる。
「不死川さん、お風呂かなぁ」
数回の着信音を待ったけれど、迷惑になりそうで電話を切った。
…少し安心している自分がいる。不死川さんの声を聞いてしまったら、決心も鈍りそうだから。
「よし!もう行こう」
スーツケースを押してドアの所まで来た。ここからは慎重に行かねばならない。
そっと襖を開けたひなたは、廊下の様子を窺った。
良かった。誰もいない。
音が響かないよう、細心の注意を払いながら部屋を出た。抜き足差し足で廊下を進み、誰にも見つからないように気をつけながら玄関を出る。
そっと玄関を閉めた時、あまりの緊張に大きなため息が出た。
「…はぁーーっ、緊張したーっ」
ここまで順調に来ることができた。あとは、人気のないお庭を、白梅目指して進むだけで良い。