第5章 陵南戦
「ごめんなさーい!」
体育館いっぱいに弾むような声が響いた。
汗で前髪が張り付き、肩で呼吸するが、入口から駆け込んでくる。
その瞬間——
仙道彰の目が、わずかに見開かれた。
仙「!?」
――見覚えのあるシルエット。
そしてあの走り方。
仙(一昨日のあの夜に出会った子…?)
夜の浜辺で、軽やかなステップで走っていた少女。
暗がりで輪郭しか分からなかったけれど、
間違いなく“あの子”だった。
赤「ばかもん!部に入ってから初の練習試合で遅刻するやつがあるか!」
「ゴリ先輩許してください!昨日の夜、今日のこと考えてたら眠れなくて遅刻してしまいました!!でもでも、相手のこともめちゃくちゃ勉強してきたので許してください!!」
ペコペコと必死に頭を下げる。
その必死さに、周囲は思わず苦笑しつつも呆れが混じる。
その光景を見つめながら仙道はゆっくりと前へ歩み出し、
柔らかく笑みを浮かべた。
仙「君は…」
「あー!!あなたはあのツンツン頭!!」
思わず指さす。
その反応に周囲がザワッとした。
木「ツンツン頭って…天羽は仙道と知り合いなのか?」
「知り合いというか何というか…」
仙道の目が楽しげに細まる。
あの日の“嘘”へのささやかな仕返しのように、
わざと表情を崩さず、いたずらっぽく告げる。
仙(暗くて分からなかったが、かわいい顔してるんだな。よし、少しからかってみるか。嘘をつかれたお返しに)