第8章 *File.8*
「諸伏と雪乃も再会したし、もういい加減、お前らには話しとくぜ。俺にも我慢の限界がある。俺と班長が、雪乃にずっと口止めされてたコトだ」
「班長…?」
「…口止め?」
お互いの仕事の都合上、しばらく会ってなかった松田からの突然の招集。
今から聞かされるらしい松田の話に全く検討も付かなくて、オレとゼロは顔を見合わせた。
「…雪乃が班長を助け、た?」
「ああ。俺が下手に動いたら、自分が知ってる物語の内容と変わっちまうかもしれねえし、そうなったら元もこうもねえって。だから俺の時も諸伏の時も、雪乃はギリギリまで動かなかった。いや、正しくは動けなかった。んだ」
「……」
さすがのゼロも黙り込んだ。
「それは、何時?」
「去年の2月7日」
「「去年?!」」
「諸伏は、雪乃の額に傷が出来てたのに、気づいただろ?」
「傷跡がまだ残ってるから、理由を聞いたよ。雪乃は、家で滑って床で切ったって言ってたけど」
ポアロでの再会後、雪乃とはまだ数回しか逢えてはいない。
「違えよ。徹夜で張り込みをしたあの日の早朝、居眠り運転の車に轢かれるはずだった班長を力の限り押した弾みで転んで、アスファルトに頭をぶつけて切った。で、病院に直行して、三針縫った。のが真相だ。ちなみに居眠り運転をして物損事故をやらかした男は現行犯逮捕、怪我人は無しとして処理された。目撃者はその場にいた班長と、班長に同行していた高木しかいないしな。高木には、あの日のことは誰にも話すなと、釘を刺してある」
「!!」
「松田は全てを見ていた、のか?」
「現場にいたからな、俺は。あれはマジでビビったぜ?雪乃から事前に聞いてた出来事が、目の前でそのまんま起こったんだからな」
「どうして…」
「諸伏、お前の気持ちは分かるが、雪乃を責めるなよ」
「雪乃は、アイツらから景光と俺に護られてることも、アイツらの恐ろしさも知っている」
「だからって!!」
思わず、声を張り上げた。
「逆に言えば、俺達はまた、雪乃に助けられた」
「…また?」
「俺達は自分の生命だけじゃなく、班長を喪う。と言う事実からな」
「恐らく、雪乃がいなければ景光、お前自身もいなかったはずだ。この世からな」