第6章 *File.6*あれから約二年半後*
「いらっしゃいませ」
「こないだは、ごめんなさい」
「いいえ。どういたしまして」
閉店15分前にポアロに行けば、今日は会いたかった人がいて、安心した。
ペコリと頭を下げると、こちらへどうぞ。と、営業スマイルのまま、カウンターの端の席を案内された。が、語尾にしっかりため息を一つ付属された。
ゼロはお冷とおしぼりを出すと、表を閉店にしてからまた戻ってくる。
「昼食はちゃんと食べたのか?」
「朝昼兼用で」
「だろうな」
半ば呆れた顔をして、キッチンに立つ。
「二人してスッキリした顔して。ったく」
「だから、ごめんって。それから有難う」
「ああ」
紙製のコースターを置くと、のせられたのはアイスコーヒー。
「少し早いが、夕食を済ませて行け。どうせその朝食兼昼食も、カップ麺あたりだろ」
「当たり!」
「自慢になるか」
「ふふっ。安室さん、すっかりポアロの店員さん、だね」
「何か問題でも?」
「私はスーツ姿の方が、ゼロらしくて好き」
頬杖を付いて、エプロン姿のゼロを見上げる。
何時見てもカッコイイわ。
目の保養です。
「……景光の前で言うなよ」
「?」
ゼロがチラチラと視線だけで周囲を確認していると、カランと音を立てて、ポアロのドアが外から開いた。
「すみません。今日は閉店……」
ゼロの言葉が途切れた。
少し驚いた顔をした後、形の良い額に手を当てる。
「…陣平?」
「腹減ったから何か食わせろー。って、雪乃??」
見慣れたスーツ姿の男が掛けていたグラサンをズラして、美声を響かせた。
「ハア」
ゼロの盛大なため息が、店内の空気を震わせた。